ある関東地方の製造業を訪問した。情報システム専任者は不在である。そもそも中小企業で情報システム専任者を置ける企業のが少ないのは理解している。この企業の情報システム担当の兼務者も来月いっぱいで退社予定だという。その企業は、生産管理システムとして数年前に大きな投資を行っていた。しかし、永遠に使い続けられる情報システムは存在しない。すでに、ハードウエアの老朽化、ソフトウエアのサポート停止時期を超えており、システムリプレイス時期を逸ししていた。
さて、現行の基幹システムにも相当の保守費用を支払っていたので、保守内容の詳細を見せてくださいとお伝えすると・・・なんと、保守契約書に相当する文書は見当たらないという。保守料は請求書通りに支払っていただけ、なにかが問題が発生すれば兼務者が電話でなんとかしてよ・・・で済ませていたらしい。つまり、相当の対価を支払っているのにどのようなサービスが受けられるか理解していないのである。ライセンスなどの契約書もなく、導入当時の契約条件もわからない。
サーバ室は、使い物にならない古いパソコンとケーブルの山、数台の小さい液晶モニター、新しい箱から出していない数台のパソコン、などが乱雑に積み上げられていた。
管理者不在、兼務者も年次で入れ替わり、もしくは退社していた。想像するに経営者が情報システム人材の採用、育成、維持を重要視していなかった可能性が高い。その結果が、このような状態を生み出してしまった。
システムリプレイス時期を逸ししてるため、ベンダーに延命策の見積を願い出れば、法外な価格が出てきた。一般的な他ベンダーの見積額の3倍相当である。アプリケーションを握っているため、最終的には、他社ベンダーが全面移行を引き受けられないであろうことを見越しているためだ。
このように、情報システム要員を軽視し、採用、育成を重要視してこなったゆえに、情報システム投資のムダが大きく発生することになる。兼務でも構わない。ぜひ、自社内に信頼できるシステム担当者を配置することの重要性を理解して頂きたい。もちろん、自社内の社員採用でなくても、顧問契約、雇用延長でも、遠隔地のリモート社員でも構わない。自社システムを理解し、運用を考えてくれる人材が必要である。それを理解しなければ、中小企業のDX推進は難しい。