自動車部品を作る中小企業の未来

既に聞き飽きたキーワードと思うがあえて書く。少子高齢化、若者の自動車離れ、シェア型自動車利用、所有から利用へ、電気自動車の低価格化、環境問題、大都市人口集中、自動車産業からモビリティ産業への変化・・・未来の自動車産業に関連するキーワードは尽きない。

近い将来、内燃機関の自動車販売台数は減り、電気自動車の時代の到来が予想されている。その結果、中小企業の歴代の伝承技術者によって丹精込めて作ってきた精緻な部品が不要な時代になるかもしれない。電気自動車は、パソコンと同じように組み立て型生産であり擦り合わせ技術はそれほど必要ではないと言われている。しかも、必要なパーツ数は半減する。 米国のコンサルティング会社 McKinsey & Companyによれば、2030年までに現在の自動車業界の過半はなんらかの破壊的な波にさらされる可能性があり、従来の自動車産業売上高の3分の1以上減少すると発表している。では、自動車部品を作り続けてきた中小企業はどうするべきなのか?

あるエンジン部品製造を担う中小企業に訪問した事がある。エンジンでも重要な部品であるシリンダー部分の製造業だ。社長は、この部品に誇りを持ち、説明には力が入っていた。同時に、世界情勢、自動車に対する考え方の変化やITの発展に伴い、近い将来、自社で製造する自動車部品の注文は確実に減っていくだろうと話していた。しかし、なにをすれば良いのか、どうすれば良いのか、全く想像もできない、故に、なにもしていないと話していた。その話には、触れたくない様子も伺われた。

例えば、EVシフトで不要になる主なエンジン部品は、 エンジンブロック、シリンダーライナー、クランクシャフト、ピストン、ピス トンピン、ピストンリング、シリンダーヘッド、シリンダーヘッド・カバー、 シリンダーヘッド・ガスケット、V ベルト、フライホイール、ドライブプレー ト、リングギア がある。自動車部品全体数で考えると6900点にも達する。上述の中小企業の場合、EV化で不要になる製品の売上比率は80%以上に達するだろう。

もし、あなたが経営者であったらどうするか?考え方のフレームワークにひとつにアンゾフの成長マトリックスがある。

(出典) https://bizhint.jp/keyword/237513

既存市場にEV関連部品を投入する新製品開発戦略、従来の自動車部品・同製造装置等以外の新規市場に応用製品や新規製品を投入を狙う新市場開拓戦略や多角化戦略など、上記のマトリックス表を参考に自社の場合を検討してみよう。あなたの会社がどのような業種であっても参考になるだろう。

参考までに 「EV シフト影響等調査について」 平成 30 年 11 月 岡山県産業労働部 によれば、希望する新市場の調査結果は以下の通りだ。

(出典)「EV シフト影響等調査について」P50 平成 30 年 11 月 岡山県産業労働部

特出した新規事業ジャンルは無いようだ。しかし、どの分野であっても特定の部品を丁寧に製造してきた中小企業には簡単に乗り越えられる壁ではない。中小企業がハードルが高いと考えている要因は以下の通りだ。

(出典)EV シフト影響等調査についてP51   平成 30 年 11 月 岡山県産業労働部

中小企業は大企業と異なり人材に余裕がない。従来の事業と異なる業務である新規事業の経験が豊富であるわけでもない。これを乗り越えなければ、自動車産業全体の売上が3分の1も減少する可能性があるのであれば死活問題だ。そのような時、新規事業経験(失敗も含む)豊富な我々のコンサルティングメンバーをチームに入れるとプロジェクトが活性化することは間違いない。