ウィズコロナの時代になり、中小企業の経営者からECサイトを構築したいと相談がさらに増えてきた。どのような業界業態であっても、このような時代になると過去の販売チャネルだけでは、思うように売り上げが上がらないということからであろう。
先日、ある東北地方を拠点とする製造業の経営者から、最近、特に業績が芳しくないので、新商品を作って、ECサイトで直販を始めたいという相談があった。よくよく話を聞いてみると・・・まず、新商品というのが、とにかくイケていない。詳しくは記述できないが、自分では買わないだろうし、人様へのプレゼントとしても使えない。もらった方も困ってしまうだろうという代物である。2つめの問題は、ECサイトを立ち上げれば、お客様がたくさん来るだろうという甘い考えである。しかも、生産体制もEC特有の流通経路も、ほぼ考えていない。(だから相談しているのだということもあるが・・)これでは、やらなくても結果は見えているようなものである。
製造業であれば、その商品は自分たちが作る大切なモノであるが、ご購入頂けるお客様があるからこそ、商品なのである。誰も買っていただけないモノを量産しても何の価値もない。せめて、世の中にどのようなモノが出回っていて、お客様はどのようなモノを欲しがっているのだろうか、その程度の最低限の市場調査は必要だ。現代は、インターネットもある、SNSもある、公開されている調査レポートも多くある、その気になれば、ある程度の関連するモノの市場感触は得られるはずだ。もちろん、それなりの覚悟があれば、プロダクトアウト型の世に問う商品であっても良い。しかし、単なる思いつきに等しいレベルの商品化は、失敗する可能性が高い。
2つめのECチャネルを立ち上げればすぐに売れるだろう、他も売れているみたいだし・・という安直な考えは即刻捨てるべきだ。売れているサイトは、ブログの地道な積み重ね、SNSを通じた緻密な計算された情報発信、リアル店舗を活用したマーケティング活動など、地道な努力を日々実行している。少額であっても効率的な広告宣伝投資を実行している例もある。過去、リアルな社会で自社の販売チャネルを構築するときの苦労と同じ程度の苦労は必要なのだと考えたほうが良い。すでに、あなたの扱う商品群のECサイトは、すでに乱立状態であり、多くのサイト運営事業の売上高利益率は10%を切っているのが実態だ。そのような中で優良顧客を獲得し、継続的に売上を確保していくためには相当な努力を要する。自社独自のECサイトを立ち上げたとしても、それは砂漠の中の一軒家、誰も来ないし、誰も気がつかない。
前述の通り、価格競争による粗利益のさらなる下落、広告宣伝費やWEBサイトの維持運用コストなどを考えれば顧客獲得コストも上昇している。さらには、商品の梱包から発送までにかかる物流コストの負担増など、ECサイトの採算を悪化させる要因は少し考えただけでもこれだけ存在する。加えて、昨今、大きな負担となりはじめているのが、さらなる返品率の上昇だ。ECサイトは、商品を見たり、手に触った触覚を確かめてから購入できない。ゆえに、当然のことながら返品率は高くなる。これも利益率悪化の要因だ。このように、ECサイトで物販を手掛けるすべての業者の業績が好調ということではないことがわかるだろう。
ECサイト運営や新商品開発を絶対に成功させることができる保証はない。しかし、その精度を高める工夫であれば、いろいろなフレームワークもあり、過去の経験を活かす道がある。ぜひ、このような相談があれば、我々のチームメンバーにご相談下さい。