新規事業企画の重要ポイントを考える

我々はコンサルティングファームなので、メンバー間で適宜情報交換とクライアントに最適な支援ができているか相互レビューの機会を設けている。先日、メンバーからこのような相談があったので紹介したい。

従業員30名、中部地方にある伝統的な産業分野の製造業である。製造設備はかなり充実しているが、売上は右肩下がりであり回復の兆しはない。加えて、新型コロナウィルスの影響もあり、今後、さらに売上減少することは容易に予想できる。そこで、マーケティング担当者から、売上回復のためのキーワードとして「自社のオリジナル商品をインターネットサイトで販売したい」という相談があったそうだ。要は、現在の商材、販路だけでは売上拡大は期待できないので、インターネット通販に進出したいということだ。

弊社の担当はマーケティング担当者から、やりたいことはなにか、どんなシナリオで進めていくのか、ビジネスプランなどを聞き尽くした。それは、新規事業企画立案のポイントとなるいくつかの重要事項について、どこまで詰めているかを聞き出すことだった。

事業を考える時に前提となる基本リスト

結局のところ、売りたいモノのイメージ、おおよその顧客イメージ、あとは、インターネット通販で売るという程度のイメージしかお持ちでなかったようだ。勿論、競合調査、市場規模などの試算も未実施、インターネット通販の仕組みも十分な理解はなかったそうだ。

新規事業開発でも、ベンチャー創業であっても事前の計画が重要だ。不十分な計画であれば、ビジネスが軌道に乗る可能性は小さいだろう。もちろん、新規事業の進め方には正解はないゆえに、やりたいやり方で自由にやることもできる。しかし、入念な調査に基づいた計画を進めながら、なんらかの壁にぶつかるたびに微調整し、ピポットしながら進めていく手法のが成功確率は高い。つまり、新事業開発は、成功する確率をいかに高め、事前にリスクを洗い出し、それらのリスクの顕在化を避けられるかが重要ポイントだ。行き当たりばったりの事業計画や不十分な調査に基づいた計画、経験の浅いリーダでは、失敗する確率は高くなる。

弊社の担当者は、まず、自社商品及び関連代替市場の市場規模のTAM調査の実施(TAM「Total Addressable Market」=対象市場を大きく捉え、関連・代替市場まで含む最大の市場規模、つまり商品・サービスの総需要)、次にSAM調査、(「Serviceable Available Market」TAMの中でターゲティングした部分の需要)、最後にSOM調査(「Serviceable Obtainable Market」実際に商品・サービスをもって市場に参入した時に、実際にアプローチして獲得できるであろう市場規模)の調査試行から始めることを推奨した。つまり、取扱商品の現実市場規模を直視し、売りたいモノの市場規模を想定することで、新規事業計画そのものをゼロベースで練り直すべきということを伝えたかったのだろう。

いずれにしても、中小企業の新規事業、企業買収による事業拡大計画は非常に難しいのが実態だ。 もし、経験豊富で、信頼できる右腕となる人材を必要とする場合、ぜひ、弊社にお声がけください。

中小企業のテレワーク実現への道 その2

そもそもテレワークとは何か?テレワークとは「ICTを活用した場所にとらわれない柔軟な働き方」と総務省の「情報システム担当者のためのテレワーク導入手順書」では定義している。それによれば、在宅勤務だけがテレワークではない。在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務(施設利用型勤務)等さまざまな働き方の総称なのである。

図表1 テレワークの形態(総務省)「情報システム担当者のためのテレワーク導入手順書」P6図表1-1を引用

中小企業であっても、必要な機材とネットワークを揃えればモバイルワークは可能である。また、サテライトオフィスは、会社が本格的なシェアオフィスと契約しなくても都度必要経費さえ払えば、だれでもその空間を利用できる環境が整ってきた。在宅勤務の場合も、パソコンなどの機材、必要であればインターネットに接続すれば大抵の仕事はできる。

では、なぜ、中小企業はテレワークを導入できないのであろうか。

図表2 緊急事態宣言後のテレワーク導入率(パーソル雇用研究所2020年調査)

2020年3月のパーソル総合研究所の調査において、テレワーク実施率は13.2%だった。さらに、緊急事態宣言後(2020年4月8日以降)大企業、中小企業を含めた全国平均でも27.9%に過ぎない。しかも、この数字は正社員を対象としたもので、非正規社員のリモートワーク実施率は緊急事態宣言後も17.0%にまで下がっていることがわかった。

図表3 テレワーク導入が難しい理由(パーソル雇用研究所2020年調査から筆者作成)

中小企業がテレワーク導入を難しい理由に、元々テレワークで行える業務ではないという最初から諦めているケース、制度や設備がないからという消極的理由のケースなど理由はいろいろだ。(場所がないという回答が10%もあったのは驚きだ。日本であれば地方都市、地方市町村でもインターネットへの接続は困難ではなく、仕事する場所の確保が困難とは思えないのだが・・・)

したがって、中小企業にテレワークを導入するためには、実現できない理由を排除し、制度や仕組みを整えていくことが必要だろう。その実現には、以下のようなプロセスが必要になる。

1.   業務プロセスの見直し(属人性を排除する)

    業務の全体像を把握し、プロセスを見直す

同時にテレワーク可能な業務を切り出す

2.   就業規則、人事考課制度の見直し(ルールの見直し、評価軸の切り替え、部分的でもジョブ型への移行)

    就業関連のルールを見直し、テレワークに沿った就業プロセスを整備する

    人事評価制度、人事情報共有、心のケアを可能にする制度を作る

3.   IT整備を行う(パソコン、ネットワーク環境、社内ネットワークへの接続などの見直し、セキュリティの見直し)

    テレワーク制度(社内規程等)に則ったIT環境整備を企画する

    段階的導入と投資予算の確保、政府、団体等の補助金制度の適用を検討

4.   テレワーク環境の整備(在宅勤務、モバイルワーク等の実施場所の充実のためのガイドライン作り、教育研修等の実施)

    在宅、コワーキングスペース等の整備支援を検討する

    テレワークが実現可能なIT環境整備を支援する

上記のプロセスのように段階的にテレワークを実現していくときに自社単独では難しいという場合、我々のチームが相談、ご支援します。ぜひ、ご相談ください。(上記の1.2.3.4の項目はテレワーク実現プロセスの一部抜粋となります)