中小企業の経営者と話をすると、多くの経営者は饒舌である。もちろん、すべての中小企業経営者がそうではないものの大抵は話好きだ。その話の中身は、こうしたい、ああしたい、こんなアイディアがある・・という思考段階ではあるが、経営戦略立案のヒントがたくさん隠されている。

「日本の中小企業経営者には経営戦略が無い」とコメントする評論家は多い。しかし、実はそうではなく経営者の頭の中にはたくさんの経営戦略が描かれているのだ。それを可視化し、具体的なスケジュール、タスクに落とし込めていないだけではないか。これが、第一の問題点である。

では、それが可視化され、文書化され、具体的になったとしても、実行され、結果を反映し、それをPDCAサイクルに乗せていけるかというと現実はそうでもない。それは、実行する人、実行できる人、組織を動かせるリーダが不在の場合が多いからだ。つまり、経営者の経営戦略と組織能力との乖離、社員の志向性との乖離が大きい場合が多いのである。これが第二の問題点だ。

コンサルティングは「答え」となる戦略や課題解決の提案そのものをクライアント企業に提示することが第一義のミッションである。しかし、中小企業の場合は、この価値提供のあり方はマッチしないケースが多いだろう。正確で迅速な実務処理能能力を求められ、人材教育がしっかりしている大企業とは組織能力に差があるからだ。

第一の問題点の解決には、やはり経営者の右腕となる信頼できるコンサルタントが必要となるだろう。まずは、補助金申請や資金需要のための中期経営計画の策定などにトライアル登用してはいかがだろうか。自分との相性、経験や能力を見極められる。第二の問題点の解決には、コンサルティング会社(もしくはコンサルタント)が掲げる基本理念、支援方針を確認するとよい。その会社のコンサルティング方針が、社員と一緒に汗をかいてプロジェクトを進めていく方針なのか否かがカギになる。つまり、実際にやってみせ、ノウハウを言って聞かせて、させてみる。そのコンサルタントが去った後、社員が同レベルのプロジェクトを自信を持って進められるように育成するコンサルティング方針か否かだ。井戸を掘ってさっさと去る方式ならやめた方が良い。井戸を掘ってもらっても、いつかは枯渇するかもしれないし、井戸の拠点を拡大することは難しい。中小企業の場合、井戸を社員とともに掘ってくれるコンサルティング会社がいい。それは、人材育成こそ経営者の想いを具現化する最短の方法だからである。

2019年11月17日