中小企業経営診断セカンドオピニオンのお薦め

先日、ある中小企業の社長から「経営診断を受けたのだが、この診断書類について意見が欲しい」との話を受けた。この企業は、食品関連製造業、社員200名弱の中小企業である。社長も情報化が遅れていると認識しているものの、どうやって進めたら良いかわからなかったので、渡に船とばかり経営診断提案を受けたようだ。

診断書の内容は、コンサルティングファーム業界独自の言葉になるが「コインの裏返し」で埋め尽くされた内容だった。「コインの裏返し」とは、あたかもコインを裏返すように、表面的に見えている問題をそのまま裏返して対策として提案することである。多くの場合、事象の因果関係と全体構造を突き詰めておらず、全体最適を考えていないケースが多い。その診断書の内容は「注文書の入力に時間がかかっている → 書式を統一し、OCRで読み取り後RPAで読み取るシステムを構築する」、「勤怠申請手書き → クラウド勤怠導入」という具合だ。場当たり的な診断と思われる診断書であるが、すでに1か月もかかっているという。

中小企業経営者の経営相談の状況
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H24/H24/html/k321000.html
 中小企業白書2011年 から引用
中小企業庁の委託により、(株)野村総合研究所が2011年12月に、
中小企業19,437社を対象に実施したアンケート調査。回収率43.1%。

上記の調査によれば、中小企業経営者の相談相手は68%が顧問税理士であることがわかる。法第1条において「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」と規定されている。経営指導に優れた優秀な税理士の先生は多いと聞いているものの経営コンサルティング領域は専門職ではないことがわかる。

税理士の年齢構成 平成28年3月現在
https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/doc/prospects/whats_zeirishi/book02/origin/page-0017.pdf
データで見る税理士のリアル 日本税理士会連合会HPから引用

また、開業税理士の年齢層を見てみよう。50歳代~80歳代で全体の71.6%も占めている。高齢であるがゆえにIT(情報化)に疎いということは必ずしも正しくないものの、巨大IT産業GAFAの影響、人工知能やモノをインターネットで繋ぐIOTなど、技術発展とビジネス変化のスピードについていくのはIT業界の人でも大変な時代だ。顧問先企業の内外環境変化、事業構造変化、競争ルールの変化などの潮流を察知、予測しつつ、コンサルティングしていくことは少々難しいかも知れない。

いつもと異なる視点が欲しい、多様な経験を持つアドバイザーから意見を聞いてより最適な解決策を自分で選びたい、顧問契約の先生には満足しているが一応違う意見を聞いてみたい、専門外のテーマなので、詳しい専門家の意見を聞いてみたい等々、ぜひ、一度ご相談ください。

中小企業でも身代金攻撃の怖さを知ろう

工場のパソコンが突然ダウン。画面には、『ビットコイン数万円分を振り込めばパソコンを復旧できます』と出ていた。町工場の社長は、数万円で修理してくれるサービスがあるなら渡りに船だ。ところで、ビットコインはどうやって払うのか?ということで大阪商工会議所に尋ねてきたそうだ。(2019/12/2日経新聞記事「経営の視点」を参照されたい)

大阪商工会議所は、上記を受けて会員30社のコンピュータを半年間を監視した結果、すべてのコンピュータがサイバー攻撃を受けていた実態が明らかになったそうだ。 中小企業はセキュリティ対策が甘いことから簡単にコンピュータウィルスの侵入を許している実態がある。 インターネットに接続すれば、世界中の情報にアクセスできるが、それと同時に世界中から攻撃対象になることも理解する必要がある。現代は、ほぼ世界中のどこでも常時高速インターネット接続が可能であり、膨大な数の悪意を持つ者がほとんどコストをかけずに攻撃することが可能な時代だ。攻撃を専門とするプロ集団、バックに国家権力がある組織、低い技術しか持たないがハッキングツールを手に入れた者などがあなたのコンピュータに攻撃をかけていることを知るべきだろう。悪意のある攻撃者は、中小企業に所属しているコンピュータを狙っているのではなく、セキュリティ対策が施されていない脆弱なコンピュータを探しているのだ。

https://www.ipa.go.jp/security/keihatsu/sme/guideline/index.html
IPA 中小企業の情報セキュリティ対策 五か条

ところで、身代金攻撃者に対して、ビットコインで振り込んだとしても解決は難しい。攻撃者は、修復のためにあなたにコンタクトを取れば、それだけ身元判明の可能性が高くなるうえ、そもそも修復するつもりなどないだろう。その結果、あなたの会社のパソコンは暗号化され二度とデータは手に戻らない。もし、そのパソコンに取引先リストや設計図などの重要なデータが入っていたとすれば、関係者への説明や信頼回復に相当の時間と労力がかかるだろう。それらの代償を考えれば、日常からセキュリティ対策を怠らない方が合理的だと考えるのが普通だ。

当社では、中小企業のセキュリティ対策の進め方、現状把握などを短期間で調査、報告するクイックセキュリティ診断サービスを用意しています。ぜひ、ご相談ください。

2020/1/4

中小企業でもウィルス対策ソフトウエアは実装しよう

中小企業のセキュリティ対策は依然として遅れている。セキュリティに投資する余裕がないうえ、どうやって、どこまでやれば良いのかわからないからと答える経営者も多い。

最近、取引先からウィルスが送られてきた!という中小企業の経営者から相談があった。詳しく聞いてみると、ウィルス感染に繋がる悪性な URLが本文に記載されたメールが送られており、本文中の URL へ接続しウィルス感染に繋がる Word 形式のファイルをダウンロードする寸前だった。このファイルを開封し「コンテンツの有効化」を実行してしまうと ウィルス感染が開始される。

これは、2019年10月後半から感染が拡大している「マルウエア Emotet」であろう。このウィルスは、実在の組織や人物になりすましを行い、返信を装うため、前提知識がなければウィルスをダウンロードしてしまう。

Emotet に感染した場合、次のような影響が発生する可能性がある。

  • パソコンやブラウザに保存されたパスワード等の認証情報が窃取される
  • 窃取されたパスワードを悪用、社内のネットワーク内パソコンに感染が広がる
  • メールアカウントとパスワードが窃取される
  • メール本文とアドレス帳の情報が窃取される
  • 窃取されたメールアカウントや本文などが悪用され、Emotet の感染を広げるメールが送信される
  • 引用 https://www.jpcert.or.jp/at/2019/at190044.html

この中小企業では、すべてのパソコンにウィルス対策ソフトウエアをインストールしていなかったようだ。大企業では、ほぼ確実にパソコンのウィルス対策ソフトウエアは実装されており、技術的セキュリティ対策も進んでいる。ゆえに悪意の行為者が狙うのは、セキュリティ対策が不十分な中小企業から狙うと考えるのが普通だ。まずは、自社のパソコンにウィルス対策ソフトウエアがインストールされているかどうかの確認から始めてみることをお薦めする。ウィルス対策ソフトウエア実装は、必要最低限の対策であることを強く認識すべきだ。

弊社では、中小企業向けクイックセキュリティチェックサービスを行っています。必要最低限から始めるセキュリティ対策の進め方のアドバイスを短期間、低予算で実施しています。ぜひ、ご相談ください。

加速するEV化の動きに注意せよ!

日本では電気自動車の普及が遅い。2017年度の新車販売台数においては、従来車275万台、電気自動車2.4万台で1%にも満たない。(数値は経産省資料 http://www.mlit.go.jp/common/001283224.pdf )走行距離が短いことやバッテリー寿命の懸念、高額な車両価格などが原因だろう。加えて、充電方法やドライブ中のバッテリー不足の心配などもある。実際の保有台数も一般社団法人 次世代自動車振興センターの統計によれば、おおよそ10万台であることがわかる。

一般社団法人 次世代自動車振興センター 調査から

しかし、グローバル視点で見れば既に激しい競争は始まっている。欧州自動車メーカーの電気自動車(EV)志向は極めて強い。独フォルクスワーゲンは2019年9月9日、ドイツで開催したフランクフルトモーターショー2019のプレビューイベントにおいて、新世代EVの『ID.3』を初公開した。 ベースモデルのドイツ国内価格は3万ユーロ(約360万円)以下になる。

http://www.volkswagenag.com/en/news/2019/09/world_premiere_of_the_ID_3.html

私達が、情報システム構築コンサルティングサービスを提供している関東地方のある中小企業は、既にEV関係部品の生産でこの先5年分の受注を受けている。水面下で量産化に向け情報システムの刷新を進めているところだ。詳しく公開できないが、発注元、利用用途、製造プロセス、全て機密情報として扱われている。これは、内燃機関連部品を地道に作ってきた中小企業経営者の耳には入らない世界なのではないか。なお、この中小企業は、自動車関連産業出身ではない。

100年に1回の自動車産業の大転換期と言われているが、もし、今まで通り普通に受注がきているのであれば、このような水面下の動きは見えないかも知れない。但し、こうしている間にライバル企業たちは、活発に動いていることは間違いないだろう。気がついたら、既に大方の勝負は決まっていたという事にならないように時代の潮流を掴む人脈、情報収集戦略、新技術、新製品開発に注力する事が必要だ。

弊社では、新ビジネスモデル構築プロジェクト支援、新製品開発プロジェクト支援もお受けしている。もし、そのような挑戦にフレームワーク手法を知るファシリテーターが欲しいという場合には、ぜひ、お力添えしたい。

中小企業の経営戦略がうまくいかない理由は何か?

中小企業の経営者と話をすると、多くの経営者は饒舌である。もちろん、すべての中小企業経営者がそうではないものの大抵は話好きだ。その話の中身は、こうしたい、ああしたい、こんなアイディアがある・・という思考段階ではあるが、経営戦略立案のヒントがたくさん隠されている。

「日本の中小企業経営者には経営戦略が無い」とコメントする評論家は多い。しかし、実はそうではなく経営者の頭の中にはたくさんの経営戦略が描かれているのだ。それを可視化し、具体的なスケジュール、タスクに落とし込めていないだけではないか。これが、第一の問題点である。

では、それが可視化され、文書化され、具体的になったとしても、実行され、結果を反映し、それをPDCAサイクルに乗せていけるかというと現実はそうでもない。それは、実行する人、実行できる人、組織を動かせるリーダが不在の場合が多いからだ。つまり、経営者の経営戦略と組織能力との乖離、社員の志向性との乖離が大きい場合が多いのである。これが第二の問題点だ。

コンサルティングは「答え」となる戦略や課題解決の提案そのものをクライアント企業に提示することが第一義のミッションである。しかし、中小企業の場合は、この価値提供のあり方はマッチしないケースが多いだろう。正確で迅速な実務処理能能力を求められ、人材教育がしっかりしている大企業とは組織能力に差があるからだ。

第一の問題点の解決には、やはり経営者の右腕となる信頼できるコンサルタントが必要となるだろう。まずは、補助金申請や資金需要のための中期経営計画の策定などにトライアル登用してはいかがだろうか。自分との相性、経験や能力を見極められる。第二の問題点の解決には、コンサルティング会社(もしくはコンサルタント)が掲げる基本理念、支援方針を確認するとよい。その会社のコンサルティング方針が、社員と一緒に汗をかいてプロジェクトを進めていく方針なのか否かがカギになる。つまり、実際にやってみせ、ノウハウを言って聞かせて、させてみる。そのコンサルタントが去った後、社員が同レベルのプロジェクトを自信を持って進められるように育成するコンサルティング方針か否かだ。井戸を掘ってさっさと去る方式ならやめた方が良い。井戸を掘ってもらっても、いつかは枯渇するかもしれないし、井戸の拠点を拡大することは難しい。中小企業の場合、井戸を社員とともに掘ってくれるコンサルティング会社がいい。それは、人材育成こそ経営者の想いを具現化する最短の方法だからである。

2019年11月17日

新規事業は明るく考えよう

大企業でも、新規事業企画チームに配置されると産みの苦しみを味わう。考えても考えてもこれぞ!という素晴らしい案は出ない。適当に考えた緩めの提案は、上司にことごとく却下される。しかも、その上司も新規ビジネスの成功経験はおろか失敗経験もない。そもそも、新規事業などは成功確率は1000案で3件、いわゆるセンミツだ。

一方、起業すると言って組織を去った輩たちはてこずりながらも粛々とコトを進めている。この差は何か?彼らは、「こんなビジネスをやりたい」と考えて出ていったのだ。しかし、新規事業チームに配属されたあなたは背水の陣でもなく、特に新ビジネスを考えたこともない。この差は歴然である。

さて、中小企業で新規ビジネスを考えるミッションを社長から直々に託されたあなたはどうするべきか。大企業と異なり、潤沢な資金、多様な経験を持つチームメンバー、中長期の時間軸は用意されないだろう。中小企業ゆえ、従来の自分の仕事もこなしながらやらねばならない。しかし、暗い気持ちになってはいけない。元々センミツだ、失敗経験を買おう程度の気持ちで進めよう。

では、どのように進めていくのか考えてみよう。中小企業の場合、資金も人も限られている。したがって、本業と関係が薄いビジネスは成立しにくい。一般的には、自社の既存顧客に新しい製品やサービスを提供するか、自社の持つ優れた技術を活かした製品やサービスを既存顧客以外の市場に提供する案が優先されるだろう。その上で、定量目標を考え、いつまでに、どのくらいの売上、利益を達成するのか目標を定めることが重要だ。そこからはアイディアが勝負。寝ても覚めても考え続ける。どんなアイディアでも良い。最初は数が勝負だ。

ここでいくつかの名言をお伝えしよう。

「新しいことをやれば、必ず、しくじる。腹が立つ。だから、寝る時間、食う時間を削って、何度も何度もやる。」 本田宗一郎

「とにかく、考えてみることである。工夫してみることである。そして、やってみることである。失敗すればやり直せばいい。」 松下幸之助

我々のコンサルティングチームには、成功経験、失敗経験を多数持つコンサルタントが控えています。ぜひ、一緒に!

2019年11月24日

社長!現状維持で大丈夫ですか?

ある地方のプラスチック関連の工場長との会話である。先行受注も好調、生産も今のところ問題ないが懸念材料は人手不足だと語る。確かに地理的には恵まれておらず、多くの若手が都会に流出している地域だ。当然、採用できる人材の数も質も限られている。今は、外国人材の活躍で労働力不足をしのいでおり、上手に活用できている会社の模範と言えよう。雑談を続けているとひとつ気になる点があった。うちは、好調だけど、同業他社でプラスチックの持ち帰り袋(いわゆるレジ袋)を作っている会社は「先行きが不透明だ」と話していたよ・・・という点である。すでに影響も出ているらしいと話してくれた。

世の中の動きは、環境配慮型商品への移行である。すでに、ユニクロは2020年までに店頭での使い捨てプラスチック包装を85%削減し、全世界のグループブランド3,500店舗でショッピングバッグを環境配慮型紙製に順次切り替える。大手スーパーもレジ袋有料化を積極的に進めており、世界的に「脱プラスチック」の動きが広がっている。イオンはリサイクル原料を使ったマイバッグを発売するなど環境への配慮に力を入れている。

そんな中、2019年10月17日石井食品とTBMの発表は刺激的だった。 石灰石を主原料とし、原料に水や木材パルプを使用せず紙の代替や石油由来原料の使用量を抑えてプラスチックの代替となる新素材「LIMEX(ライメックス)」をミートボールの袋やおせち料理のトレーに採用するという。翌日、一時は制限値幅上限の同80円高の282円ストップ高まで上伸し、連日で年初来高値を更新した。

このプラスチック関連工場も今は好調であるものの、近い将来、環境配慮型社会への動きが間違いなく迫ってくる。好調な今だからこそできることは何か。好調期を迎えている経営者であればこそ、次の一手を考える時期だ。しかし、多忙かつ多くの課題も抱えつつ新プロジェクトを進めるのは難儀である。時間を買うという意味でもコンサルタントを活かす戦略はいかがであろうか。

2019年11月14日

外国人労働者のキャリアプラン

関東地方のあるプラスチック関連製品を製造する中小企業の話である。その地域は、人口が減少しており、新卒採用は難しく、中途採用しても定着しない状況が続いている。

上記企業では、数年前から製造工程に5名のベトナム人に働いて頂いている。彼らは既に製造工程における重要なポジションを担っており、もはや彼ら無しでは製造ラインが止まってしまう。日本人従業員は、子息の学校の会合だ、体調悪いなどで急に休む事もある中、彼らは、休めと言わないと休んでくれないと言う。また、今日は残業はありませんか?と気を使ってくれるそうだ。では、彼らの人件費は?と経営者に尋ねてみると日本人と全く同額を払っているし、監理も依頼しているのでその費用もかかっている。割高ではあるが、大変ありがたいと話していた。

2019年10月27日の日本経済新聞社説『外国人の「受け入れ」は一里塚にすぎない』に「日本に受け入れた後の人材育成も、もちろん重要だ。企業は仕事を通じて技能や日本語力を高める職場内訓練(OJT)を計画的に進める必要がある。どんな仕事をどのような順番で経験させれば外国人の能力開発に効果的か、よく考えるべきだ。」と述べている。

この主張は、誰もが同意できるだろう。しかし、中小企業の実態を考えるとかなり難しいのではないか。例えば、このプラスチック製造中小企業には、日本人従業員向けの教育育成プランもキャリアプランも用意されていない、社外研修制度も無く、基本的にOJTのみが教育プランだ。そのOJT内容はそれぞれの上司に任されている。この企業に外国人向け技能教育、日本語教育、OJTプランを計画的に進めよという事が現実的だろうか。

(出典)中小企業庁「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」 (人材力研究会)
報告書 P31「OS」をアップデートする(「人生 100 年時代の社会人基礎力」を身につける)

中小企業が受け入れる外国人労働者への教育プログラムが「いわばOS」なのか、いわば「アプリ」なのか。いわばアプリ領域ならばどのレベルまで持っていくのか。技能研修生は最大5年という限られた時間しかない。今、我々はベトナム人社長が経営する人材会社と効果的な育成方法を協議している。社説の趣旨を具体的に実現できる枠組み、かつ、中小企業に無理なく受け入れて頂ける仕組み、つまり教育投資が必要最小にもかかわらず最大の効果を得られる仕組みだ。本企画に興味がある中小企業経営者がいらっしゃるようであれば、ぜひ、ご連絡いただきたい。

2019年11月4日

ECの勢いは止めらない

地場の食材製造卸の中小企業の話をしたい。食品原料製造卸が主たる事業であるが食品加工品の消費者向け直販サイトと工場に併設した小さな店頭も持っている。その中小企業のホームページは、5年以上前に開設したもので既に担当者は退社、いつどこに頼んで作ったのかもわからない。管理されていないサイトの典型である。設計は古く、見にくい、わかりにくい、スマートフォン表示もできないと三拍子揃っている。普通に考えれば、訪問者はすぐ他のサイトに離れてしまうだろう。前述の通りこのサイトでは直販商品(食品原料や加工品など)を販売している。これでは、売れないだろうと思い、売れていますか?と聞くと予想に反して、毎月結構注文がくるんですとの回答だった。

北米では、次々とショッピングモールが廃墟モールとなっている。伝統ある著名な小売チェーンが倒産する。この原因のひとつはインターネット通販の興隆だ。もはや、日本においてもこの動きを止めることは難しい。

(出所)Report Collection | Jun 27, 2019
Global Ecommerce2019 Global

この食品製造卸企業が、もし、ホームページを有力な販売チャネルと考え、適切なマーケティングを行ったらどうなるだろうか。ホームページのリニューアルに際し、設計段階から効率的な運用を考慮し、Webマーケティングのプロと一緒にリニューアル計画を進めたら今の数倍の売り上げができるだろう。特に、この中小企業の取り扱い商品は。国産地場産の食材に限定している。生産者の顔も見える。これは大きな強みだ。

では、このプロジェクトが相当な投資になるかと言えば実はそうでもない。しかも、売上直結ゆえに成果も計測しやすい。地道にやっていれば1年で必ず芽は出る。

仮にリアルな世界で新しく販売チャネルを開発しようとすれば、新規開拓先のリストの抽出から営業方法の検討、提案資料作成、営業担当者教育、度重なるミーティングなど多くの時間と手間がかかる。しかも、販売代理店として契約してくれたチャネルが期待通りに売ってくれるかどうかはわからない。直販を拡大する場合は、営業担当者の採用、教育、キャリアプランまで考えなければならない。

従来の営業方法と比較すれば、インターネット販売はきちんとやれば間違いなく売り上げは上がる。その投資も相対的には小さい。もちろん、営業直販、販売代理店戦略も必要である。特に、顧客が地場中心の中小企業は地道な営業活動も必要であり、チャネルの使い分けが重要だ。

もし、インターネット販売戦略に充当できる人材がいない、これから育成したい、挑戦してみたいが、支援して欲しいなどのご要望があれば精一杯支援する用意がある。もちろん、売上拡大の力になれる自信がある。

自動車部品を作る中小企業の未来

既に聞き飽きたキーワードと思うがあえて書く。少子高齢化、若者の自動車離れ、シェア型自動車利用、所有から利用へ、電気自動車の低価格化、環境問題、大都市人口集中、自動車産業からモビリティ産業への変化・・・未来の自動車産業に関連するキーワードは尽きない。

近い将来、内燃機関の自動車販売台数は減り、電気自動車の時代の到来が予想されている。その結果、中小企業の歴代の伝承技術者によって丹精込めて作ってきた精緻な部品が不要な時代になるかもしれない。電気自動車は、パソコンと同じように組み立て型生産であり擦り合わせ技術はそれほど必要ではないと言われている。しかも、必要なパーツ数は半減する。 米国のコンサルティング会社 McKinsey & Companyによれば、2030年までに現在の自動車業界の過半はなんらかの破壊的な波にさらされる可能性があり、従来の自動車産業売上高の3分の1以上減少すると発表している。では、自動車部品を作り続けてきた中小企業はどうするべきなのか?

あるエンジン部品製造を担う中小企業に訪問した事がある。エンジンでも重要な部品であるシリンダー部分の製造業だ。社長は、この部品に誇りを持ち、説明には力が入っていた。同時に、世界情勢、自動車に対する考え方の変化やITの発展に伴い、近い将来、自社で製造する自動車部品の注文は確実に減っていくだろうと話していた。しかし、なにをすれば良いのか、どうすれば良いのか、全く想像もできない、故に、なにもしていないと話していた。その話には、触れたくない様子も伺われた。

例えば、EVシフトで不要になる主なエンジン部品は、 エンジンブロック、シリンダーライナー、クランクシャフト、ピストン、ピス トンピン、ピストンリング、シリンダーヘッド、シリンダーヘッド・カバー、 シリンダーヘッド・ガスケット、V ベルト、フライホイール、ドライブプレー ト、リングギア がある。自動車部品全体数で考えると6900点にも達する。上述の中小企業の場合、EV化で不要になる製品の売上比率は80%以上に達するだろう。

もし、あなたが経営者であったらどうするか?考え方のフレームワークにひとつにアンゾフの成長マトリックスがある。

(出典) https://bizhint.jp/keyword/237513

既存市場にEV関連部品を投入する新製品開発戦略、従来の自動車部品・同製造装置等以外の新規市場に応用製品や新規製品を投入を狙う新市場開拓戦略や多角化戦略など、上記のマトリックス表を参考に自社の場合を検討してみよう。あなたの会社がどのような業種であっても参考になるだろう。

参考までに 「EV シフト影響等調査について」 平成 30 年 11 月 岡山県産業労働部 によれば、希望する新市場の調査結果は以下の通りだ。

(出典)「EV シフト影響等調査について」P50 平成 30 年 11 月 岡山県産業労働部

特出した新規事業ジャンルは無いようだ。しかし、どの分野であっても特定の部品を丁寧に製造してきた中小企業には簡単に乗り越えられる壁ではない。中小企業がハードルが高いと考えている要因は以下の通りだ。

(出典)EV シフト影響等調査についてP51   平成 30 年 11 月 岡山県産業労働部

中小企業は大企業と異なり人材に余裕がない。従来の事業と異なる業務である新規事業の経験が豊富であるわけでもない。これを乗り越えなければ、自動車産業全体の売上が3分の1も減少する可能性があるのであれば死活問題だ。そのような時、新規事業経験(失敗も含む)豊富な我々のコンサルティングメンバーをチームに入れるとプロジェクトが活性化することは間違いない。